〔ルノアール〕
お客様と待ち合わせして商談するとき場所に悩みます。駅ビルカフェは混んでいることが多いし、コーヒーチェーンだと隣のテーブルが気になります。その点、基本的に混んでなく、スペースもゆったりしているルノアールは便利です。
ただ、考えることは同じなのか、八重洲口のルノアールでは、隣のテーブルで怪しい商談が繰り広げられていたりして、自分たちが同類と思われないかとヒヤヒヤします(笑)
そういえばルノアールは、□□ヒルズとかの大規模ビルや、ららぽーと□□とかのショッピングモールでは見かけないですよね。ターミナル駅近くの、どちらかというと老朽化が進んだビルに入っていることが多く、店舗内装とあいまって、昭和の喫茶室をイメージさせる所以でもあります。

このルノアール、コーヒー600円位で喫茶店としては客単価は低くなさそうですが、家賃や人件費の方が高そうだし、回転率も悪いので儲かっていないイメージがあります。しかし実際は特別利益という収益口があって、それが小さくないのです。
その特別利益とは「受取補償金」つまり「立退料」で、毎年、相当額が計上されています。年度によっては本業の営業利益に迫るケースも見受けられます。
つまり、建替えや再開発機運のある老朽化ビルに入居することは、彼らの不動産戦略だったのです。そもそも喫茶店ではなく「喫茶室」とうたう段階で、スペースを収益にするという不動産会社的思考回路が備わっているのでしょう。

借主保護のスタンスに立つ借地借家法のもとでは、大家(or地主)は保有不動産を再活用したくとも、制限されてしまうのはご存じの通り。
この賃借権と所有権のバランスの悪さは、平成バブルの相続税問題(路線価逆転)から、最近のサブリース問題まで連綿とつづいてきた問題であり、それは今後も変わらないでしょう。
アパートは老朽化していくにつれ、その入居者の属性も落ちていくのが常ですから、築古一棟アパートの末期は「他に住むところがない賃借人」VS「賃借人を追い出して建替えたい大家」とのバトルが予想されます。投資家は出口がなくなります。立退料目当ての新ビジネスだって生まれるかもです。
そうか、賃借人が強いことを分かっているルノアールだから、コーヒー一杯で長居が許されるんですね!